深夜、仕事が長引いてしまったあなたは帰宅の道を急いでいる。ふと気づくと、誰かが後ろからついてくる気配がする。不安を覚えたあなたは歩みを止め、そっと後ろを振り向いてみる。もちろん誰もいない。あなたは胸をなで下ろし、また歩き始める。そしてしばらく歩いていると、また誰かの気配。尾けられてる?もう振り向く勇気はない。あなたは先程よりも早足で歩き始める。しかし、後ろを誰かがついてくる気配は一向にやむことはない。あなたの歩く速度はどんどん早まり、最後には駆け足になる。この角を曲がればすぐそこがわたしのアパートだ。もうすぐだ。もうすぐ着く。気の緩んだその刹那、あなたの肩が突然だれかに掴まれる。あなたは息を呑んで立ち止まる。振り向いちゃいけない。振り向いちゃいけない。そう思いながらもあなたはおそるおそる後ろを振り向いてしまう。あなたの目に飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべた軽部真一。しばらくの沈黙の後、彼はおもむろに口を開いた。「キミ、明日から『めざましファミリー』ね」。笑顔に関わらず、彼の目はけして笑っていない。恐怖に耐えきれず気を失いゆくあなたが最後に見たものは、か細い街灯の明かりのもと、闇夜にぼんやりと浮かび上がる蝶ネクタイ。