interview @ '91(抜粋)その2


――日頃の発言などを見てると、はてなダイアリー・シーンに対して常に苛立ちを隠さない火災くんですが。
火:「んー、ホントは別に苛立ってもいないんですけどね。いいやって。でも、ついいろいろ言っちゃうのは、やっぱ自分らもそこにいるからね。しょうがないっすよ。別にぼくら、批評性を売り物にしてるわけではないんですよ、けっして。そういう誤解が最近生じてるような気もちょっとしてるんだけど。正しいことを言わなきゃって気も別にないし」
――ふたりが考えるはてなダイアリーって?
火:「はてなダイアリーかぁ。わりといいほうに解釈したいな。reikonさんとか。そっち。あんまりキーワードいじりとか暴力的なはブコメとかってほうに行きたくない。jkondoさんのこないだの夕焼け写真とか。そういうふうに、わりといいほうに考えたいんです。でも、わかんない。結局、はてなダイアリーとかぼくらが言うときは、やっぱり自分ら寄りになっていくと思うし。ただ、自分らにとっていいほうっていうと……うーん、今、たとえば『モテ/非モテ』とかでウケるようなダイアリーってことを考えると、さっきも言ったみたいに、ますます違う方向を向いてるかなって気はしますけどね、準決勝は」
――準決勝はよく“ネタサイト”とかって形容されて。それに対してずいぶんと反発してますよね。
火:「ああ、言われてたまるかって(笑)」
――ただ、その言葉にも象徴されるように、日本でネタって言葉を使うとき、妙な意識がくっついてきますよね。ネタって言葉が半笑いになってる、みたいな。
火:「それはすごい残念なことだと思ってる。ぼくらネタが好きだし。だからこそ、ポスト・テキスト・サイトではなくてポスト・ネタ・サイト、“PNS”って言ってるわけで。やっぱりネタっていうものに憧れてるし」
――それは漫才や落語のネタ?
火:「いや、概念、概念。どんなものに限らず……あ、でも、その概念の大もとが演芸なのか。うーん、しょうがねーな。でも、概念ですよ。こう、ドン!とぶっちぎれてて。誰でも理解できて」
災:「わかる人だけわかる、のほうがかっこいいとか、そういう観念がないですから。サイトで言うと、んー、何かな?」
――「ろじぱら」とか?
災:「あー、そういうものかな。まあ、ろじぱらがいいかどうかは別としてさ。みんなが知ってるのはいいんじゃない?」
火:「あとで話のネタになって面白いしね」
――火災くんもそういうものを作りたいわけですか?
火:「そういうものを作りたいんだったら、もっと別のことしやがれって?(笑)」
――自分たちの考えてることがそんな誰にでもわかってたまるか、みたいな気持ちはありません?
火:「その狭間で揺れ動く少年の心理って言うんですか?(笑)趣味の一環としてネタってのもあるんだけど、趣味の一環として異常にいじけたものもあるわけですよ。そういうネタ的なものは好きですか?って言われたら、好きって答えるけど。でも、それだけがすべてじゃないしさ。理解されないでかっこいいものだって絶対にあると思う。理解されないほうがかっこいいものもあるんじゃないかな。その時代に理解されちゃったらかっこわるくなっちゃうものもあるだろうし」
災:「読者に理解されないほうがかっこいいサイト作って、それで売れたらなぁ」
火:「ああ、もうそれはすごいわ」
災:「最高!」
火:「へへ、情けない。最終的な迎合ですね(笑)。でもね、こんなこと言ってるけどさ。実際に更新してるときは、なんか、いいの、そういうことは、どうでも」
災:「なんにも考えてない。ただ、更新し終わったあとがこれ、問題でね。今回更新したあともすごい問題だった。内容は全然これでいいんだけど。内容は置いといて。これ、どうやったらはブられるかな、とかさ」
火:「サイトを更新したぼくらがいて。で、し終えたときから、今度はいち読者としてのぼくらが登場するわけじゃないですか」
災:「だけど、このいち読者がさ、もう全然読解力ない読者で(笑)」
火:「ダメなんですよ。読み切れないんですよ、これが。でも、少なくともブックマーカー相手にはブられようとか思ったら、こんなふざけたサイトは作らなかったかもしれない。さっきの言い方をすれば、今、絶対に売れやすいのはブログ的なものなんですよ。議論するもの、主張するもの。でも、ぼくらの興味は今すごくネタなものに向いていて。そういうサイト作って」
災:「にもかかわらず本人たちのキャラクターときたら……」
火:「すっかりブログ的で(笑)。折り合いがつかんな、と。悩んでるんですけどね」
災:「だから、もう何も言わないほうがいいのかもしれないな、準決勝については。ホント、ぼくら口を開くとね、準決勝の品位を落としてるんじゃないかって」
火:「かわいそうでね、準決勝が。だから、もう黙りやがれって」
――なんでそんなに屈折しちゃったんですか?
災:「……屈折」
火:「この素直な」
災:「純真な心を持つ」
火:「火災くんをつかまえて。そりゃないでしょ。うーん、子供のころお母さんが添い寝してくれなかったからじゃないすか?(笑)」