ひとからなにか質問を受けるたび、他人に対して果てしなく親切な俺は、「ググれ」、もしくは「ウィキれ」と言うことにしている。そうすれば俺自身が答えるよりもはるかに解答が早いし、なにより他人に俺の並外れた無知がばれるおそれがない。もちろん自分自身でも、なにかわからないことがあるとすぐにググり、またはウィキることにしている。まったく良い世の中になったものだ。俺は、どんな質問にもクリックひとつで解答をだしてくれる、「知の集合体」としてのインターネットを愛している。答えはいつも手元にある。


 が、しかしその一方、決して答えを知りたくない質問というものが、俺にはある。そして、その解答に不意に出くわしてしまわぬよう、ネットの内外問わず、日々細心の注意を払っている。もし、その答えを知ってしまえば、俺はいったいどうなってしまうのだろうか。心の一部が、ごく僅かではあろうが、どこか欠落したような気分になるんじゃないだろうか。俺は自分がそうなるであろうことがひどく恐ろしい。


 だから、俺は決してその答えを知りたくない。未来永劫に、だ。だから、画面の向こうのおまえらにも、声を大にしてお願いしたい。誰も俺にその答えを教えないでくれ。季節が変わるたび「そろそろパーティーの時期じゃないか?」とほくそ笑み夢想する楽しみを、俺から奪わないでくれ。お願いだ、ひとの心の聖域を侵さないでくれ。俺は絶対に知りたくないんだ「西田ひかるの本当の誕生日はいつか」なんて。