10回目の誕生日おめでとう。きみがすくすく育っていくのを見ているのは、ぼくにとってもうれしい限りです。


 せっかくこうやって文章にしているのだから、いい機会なのでいろいろ謝ります。いつも言っている、「きみの名付け親は俺だよ」という言葉。あれは嘘です。きみのお父さんとお母さんは、きみがお母さんのお腹にいる頃からその名前をつけて、愛おしそうにお腹に呼びかけていました。ごめんなさい。それから「きみのホントの父親は俺だから」って言葉。あれも嘘。きみのお父さんとお母さんがいない隙を見計らって何度も耳打ちしていたことを心から謝ります。ごめんなさい。きみは、紛れもなくきみのお父さんとお母さんの子供です。でも、あの最初に耳打ちしたときのびっくりした目を見るのが楽しくて、あんなに何度も言ってしまいました。ホントにごめんなさい。


 最近世の中暗いニュースばかりで、オトナもいろいろ大変です。10年前の今頃、ぼくはきみのお父さん・お母さんやそのほかの友達と、同年代ばかり、それも既婚者だけで三鷹蕎麦屋で飲んでいました(「既婚者」というのは、「奥さんや旦那さんがいるひとたち」って意味です)。その場では、もちろん早々に生まれてくるきみのことも当然話題になりました。そしてぼくはそのとき思いました。「ここにいるぼくらの子供たちが10才になったとき、世の中どんな風に変わっているんだろう?」って。今になって考えてみると、なにかがちょっと便利になったくらいで、あまりなにも変わらなかったような気がします。政治家は汚職し、企業は隠蔽し、オトナは曖昧な答えをし、コドモはそれを見抜き、そしてはてなのサーヴァは今日も落ちている。そのせいで、きみがぼくや彼の子供たちといっしょに作っているGの日記を見られないわけだけど。でも、それもこれも10年前のあの頃ととまったくおんなし調子です。なんにもびたいち変わってない。


 きみが生まれてからの10年、世界がなにも変わらなかったように、この先10年20年経ってもなにも変わることはないでしょう。ただ、これだけは覚えていて欲しい。そんな中でもいちばん変わらないのは、きみのお父さんとお母さんのきみへの思いです。10年前の今日、きみがどんな風に生まれてきたか、そして、どれだけの数のひとが、きみの誕生を心から祝ったか。その話を忘れないでください。それさえあれば、きみはまっすぐ生きていけるはずです。


 それじゃあこのへんで。10回目の誕生日ホントにおめでとうアキラくん。きみの人生がこの先実り多いものであるよう心から願っています。あと、これからも変わらずぼくとぼくの家族と仲良くして下さいね。それじゃあまた。
 

p.s. それでも・・・やっぱりきみのホントの父親はぼくのような気がするんだ・・・