クライマックス


 連休をハワイで過ごし、帰国して家のドアを開けたら部屋の奥からスローモーションでゆらりと現れるチョウ・ユンファ。・・・いや違う。チョウ・ユンファじゃない。あれは劇団ひとりだ。ひとりに待ち伏せされていたんだ。俺を見つけたひとりがゆっくりとこちらに両手をあげる。まさしく二丁だ。二丁キュウリだ。俺はひとりが照準を合わせるより一瞬早く、両腰から茄子を引き抜き素早く構える。対峙する俺とひとり。室内に飛ぶ何百枚の白い鳩サブレ。互いの額に茄子とキュウリの照準を合わせたまま俺とひとりは微動だにしない。10分経過。そのとき後ろから現れるひとりの女性。両手には山芋。彼女は黒社会では「二丁山芋のキャサリン」と呼ばれているとかいないとか。そして右手の山芋で俺の額、左手の山芋でひとりの額に狙いを定めている。しかし彼女が姿を現した瞬間、俺は左手の茄子で、そしてひとりは右手のキュウリで、もちろん彼女の額に狙いを合わせている。まさに三竦み。ふと見るとディレクターズチェアーでタランティーノ(実は川谷拓三)がげらげら笑ってる。ジョン・ウーが笑ってる。お日様も笑ってる。今日もいい天気。ただしツイ・ハークは決して笑わない。だって彼はワイヤー・スタントにご執心だからな。