新宿で呑んだことについての詳細な記録あるいは単なる長い話 pt.1


 前日の夜メッセでダイアリーナにナンパされたので突然新宿に行くことになった。火災仕事でへとへとなのに。メンドが臭いよ。帰りたい。あと、労働の後なので、自分自身の加齢臭のキツさに泣きそうになる。新宿に着いたところですでに火災涙目。メールで連絡すると「もう飲んどるわ。早よ来いボケ」という返答。あれ?あのひとこんなキャラだっけ?ソートー呑んどるなこれ。
 店に着くとすでに発泡乙女さんが大ジョッキをあおっている。その正面にニットキャップ。いつものように焦点の合わない眼で座っている。口が半開きなのもいつものことだ。発泡乙女さんが開口一番「早よ座っておまえも頼まんかい」・・・ろ、牢名主?火災おそるおそる中ジョッキを注文。「大にせんかい大に!」火災泡食って大ジョッキに変更。発泡乙女さんは呑むスピードが異常に早いので、おいてかれないように火災も呑むんだけど、やっと火災がひとくち呑んだと思ったら発泡乙女さんはもう次の大ジョッキを頼んでいる。「すいませーん。ビール。ピッチャーで!」えー。火災そんなに飲めないー。「わしが呑むんやがな!」
 他のメンツは遅れ気味なので、とりあえずニットキャップを肴に酒をひたすら呑む。
 「『モテ』とか呼ばれてチョーシこいてんじゃねえぞオラ!」「おまえの腹黒さをはてなのひとにあまねく知らしめたい」「はてなを更新せずに『木端微塵』行くとはなにごとだ。おまえが更新しないでどうすんだよ!」などと罵詈雑言をニットキャップに次々と浴びせかけた。主に発泡乙女さんが。火災は黙って見てた。でも最後の「更新せずに〜」のくだりについては、「ネットせずに夜遊びする方がよっぽど健全なのになあ」と思った。もちろん火災黙ってたけど。罵られてる当のニットキャップは、やっぱり眼の焦点が合わず口が半開きで、全く無反応のテイを装っていた。二の腕に彫った「はてな命」のタトゥーを愛おしげになでてた。
 発泡乙女さんのニットキャップいじめが一息ついた頃、春さん登場。春さんははじめて会うひとだ。写真とは違ってインディアンの酋長の姿で現れたのが印象的。席についても大きな羽根飾りをかむったまんまなので、隣の席のひとの肩にずっと羽がふぁさふぁさしてた。春さんは「オデ、肉、喰イタイ」と言葉もカタコトのひとだった。そんなになりきらんでもええのに、と思った。けどそうじゃなくて、春さんはインディアンとインディアンのハーフなんだそうだ。春さんは、食べやすいようにと頼んだ料理を腰にぶらさげた石おのでいちいち細かく切り分けてくれた。そういった細やかな心遣いのできるインディアンだった。


 つづく

新宿で呑んだことについての詳細な記録あるいは単なる長い話 pt.2


 次に現れたのはサリ井さんだった。このひとは極度のメガネ好きで、会うたび火災のメガネを隙あらばもぎとろうとするので危険だ。なるべく火災と離れたトコに座らせる。でもテーブルを飛び越えてまでつかみかかろうとするので、とりあえず首輪をつけ、手綱の先をどうすべきか悩んだあげく、春さんが乗ってきてた馬の鞍にくくりつけといた。これで火災一安心。
 ふと隣りを見ると、さっきまでよだれをたらしながらぼーっとしていたニットキャップが、急に眠りから覚めたかのように活動を開始した。開始したといってもニットキャップをかむり直しただけだけど。なにがあったのかといぶかしみ、ふとニットキャップの手元を見ると、春巻きの皿が置いてある。思い出した。ニットキャップは春巻きが大好物だったんだった!だから眼の焦点がやっと合ったんだ!思い出しついでに名前を「春巻き」に変えたれ。
 春巻きは自分の前に置かれた3本の春巻きが春巻き自身のものだと勘違いしたのか春巻きは春巻きを一心不乱に食べ始め、春巻きのせいで春巻きは春巻きの春巻きが春巻きとなったのだと思った。


 ・・・ようわからんくなったので「ニットキャップ」に戻す。


 トイレから戻った春さんは、いつのまにかサンバダンサーのかっこに変わってた。腰の後ろについたでっかい羽根飾りのせいで、ひどく座りにくそうだ。そんならそんなかっこせんかったらええのに。春さんはこのかっこで馬にまたがって家に帰るのかなあ。
 火災がサリ井さんのメガネもぎとり攻撃をかわしてると青梅さんがやってきた。ふと見ると手元にダウンジャケットとマフラーを持っているので、青梅にはもう冬が来たのだなあと思った。思ったとおり、足にはカンジキを履いてた。青梅を前日の昼に出発して、やっと今新宿に着いたとのこと。
 青梅さんはいいひとなんだけど、なにかと青梅の話をしたがるのでその点とってもやっかいだ。

火災「あ、そーいえばこのまえさー・・・」
青梅「オラの村の沼さ龍神様が棲んでらっしゃるのす」
火災「・・・へー。・・・でさー・・・」
青梅「龍神様がオラの村さ守ってくれとるのす」
火災「・・・そーなんだー。・・・あ、でね?」
青梅「今年は龍神様に村の娘コさ生け贄に捧げただに、畑を荒らす悪いカピバラさ出なかったのす」
火災「・・・い、生け贄って・・・」
青梅「じゃけんど、カピバラがおらんなったかわりに最近インパラとエミューが増えてきたのす」
火災「・・・」
青梅「ホンに青梅はええトコだす」

 ・・・火災、龍神様がすごいということだけはよーくわかりました。あと、ニットキャップはまだ春巻きを食ってる。5皿目。発泡乙女はピッチャー3杯目。


 まだまだつづく。でも、ここでちょっと、コマ〜シャル!

新宿で呑んだことについての詳細な記録あるいは単なる長い話 pt.3


 こんだけダイアラーとダイアリーナが集まると、イキオイはてなの話になる。あとは共通の知人の話とか。ほぼ悪口。火災以外が。あと、今回は火災が連載してた「脳内恋愛日記」に全員の非難が集中した。ニットキャップとサリ井さんは、ふたりして口々に「あんたは鬼だ。ひどすぎる。人間性を疑う」とまでゆうし、青梅さんは「あれ全部嘘だったのすけ?」といまだに疑ってるし、発泡乙女さんは空になったピッチャーを火災に投げつけようとするし、春さんはなぜだかサンバ踊ってるし、もうさんざんな扱いを受けた。「おまいらがすぐ釣られるから悪いんじゃないのすけ?」と火災が覚えたての青梅弁で反撃すると、「だからあんたは鬼だと言ってるんだ」「ちょっとはひとの気持ちを考えろ」「あのはらはら感を返せ」「ヅラのくせに」「彼女いない歴=年齢のくせに」「水虫のくせに」「アビラウンケンソワカ」「はらたいらさんに全部」などとまたもや袋叩きにあった。みんなひどすぎる。
 火災がみんなのパンチを浴びすぎて「ずんの飯尾」みたいな顔になった頃、チングがやってきた。
 関係ない話だけど、今「チング」を変換したら「チン具」になった。彼の人間性を火災のATOKはよくわかってるなあと思ったよ。
 全員そろったので、とりあえずみんなで「キム祭りオツカレ」の乾杯をした。そのあと「あれは楽しかった」だの「盛り上がったねえ」だの「訪問販売には気をつけよう」だの「実はこないだ離婚して・・・」だの、話題が火災の「脳内恋愛日記」からどんどこ離れていったので、火災ちょう安心した。そしてもうそのあとはなごやかな飲み会になった。


 火災もしこたま呑みながら、ふと周りを見回すと、ニットキャップが普段絶対に脱がないニットキャップを脱いでアルシンドハゲを晒していた。酔ってる。サリ井さんはずっと「乳首がずれてるポリスマン!」を、誰も見てないのに独りでやり続けていた。ポンゲで酔ってる。青梅さんは青梅の方向に向かってなにかつぶやきながら、手を合わせて一心不乱に祈り続けている。すんごい酔ってる。発泡乙女さんはなぜかすごい勢いで壁に頭をぶつけ続けている。エクストラバガンザ酔ってる。チングは全裸。これは酔ってない。あと、春さんはいつのまにか股間に白鳥の首がついたバレリーナ姿になっていた。今度は座りやすそうだったけど、白鳥の首が邪魔して酒が呑みにくそうだった。




 みなさんのようなレストランでいつまでたっても注文したものが出て来る気配のない準決勝erみたいなもんが、いっくら「飽きた」「Uzeeeeeee!!!!111」とゆおうとも、まだつづく。

新宿で呑んだことについての詳細な記録あるいは単なる長い話  最終回


 それぞれ思い思いの酔っぱらい方をしていると、発泡乙女さんが突然「あかんがな!今日平日でっせ!みんな明日仕事やがな!ありえへん!」などとなぜか関西弁で空気を読まない発言をしたので、とりあえず殴ってやった。春さんもサリ井さんもチングも我に返って「そ、そういえば・・・」と由々しき事態に気がつきはじめたので、ついでに3人とも殴ってやった。ニットキャップは「あー、関係ないっす。僕学生っすから」と鼻をほじりながらちょこざいなことをゆった。これはもちろん心底殴ってやった。青梅さんが「カピバラよりも実はマンドリルの方がおっとろしいのす・・・」とつぶやいた。ゆってる意味はまったくわからなかったけど、わからないままこれも殴ってやった。殴り倒したら全員ピヨってしまったので、しょうがなく火災が店員さんを呼んで会計をした。そんでピヨってるみんなの財布からそれぞれ金をくすねて、火災以外の6人で割りカンになるようにした。
 勘定をすませ、みんなの財布についた火災の指紋をきれいにぬぐい、みんなを揺り起こした。チングが「あ、あれ?勘定は?」とふらふらしながら聞くので、「もちろん火災が全部払ったよ。アタシマエやがな。こちとらオトナなんですから。ふふん♪」とゆったった。そしたら気がつき始めたみんなが次々に火災の足下にすがりつき、歓喜の涙を流しながら火災への感謝の言葉や火災を賞賛する言葉を口にするので、火災は「なんや知らんが貧乏人たちにええことした気になってきたなあ」とちょういい気持ちになった。「オトナの火災が(みんなの財布から金をくすねて)勘定を全部払った」・・・かなり途中はしょったけど、火災嘘はぜんぜんついてないもんね。
 みんなあわてて帰り支度を始め、火災がトイレから戻ってきてみたら、春さんは最初のインディアンの格好に戻っていた。さすがにバレリーナじゃ馬に乗りにくいだろうなあ。
 店を出るとみんなが口々に「火災くんにおごってもらってありがたい。みんなでなにかお礼をしたい」とゆってきた。火災もちょっとホントにおごってやったかのようないい気持ちになったけど、オトナなので丁重にお断り申し上げた。断ったんだけど、チングとニットキャップと発泡乙女さんが騎馬戦の騎馬をつくるので、火災その上にしょうがなく乗っかりました。「さあ、行きましょう!」チングが一声あげると、みんなで「わっしょい!わっしょい!」とかけ声をかけながらJR新宿駅へと向かった。騎馬のまわりを青梅さんとサリ井さんが「火災」の文字が染め抜かれた大きなうちわをふりまわし、インディアン姿の春さんは雄叫びを上げながら馬でぐるぐると走り回ってた。火災は振り落とされないようにチングの肩をしっかりつかみながら、「雨がうっとうしいなあ。傘さしてもいいかなあ?あと股間が痛いんだけど・・・」と思った。


オワリ

新宿で呑んだことについての詳細な記録あるいは単なる長い話・総評


 メンツのうち火災独りスーツだったので、まるで「上司が部下とバイトを無理くり呑みに誘ったイヤな雰囲気の呑み会」みたいになってたよ。あと、あまりにもリアリティにあふれすぎてるのでidは伏せさせて頂いたのやよ。なんつーかさー、そういう、火災がいかに気遣いができるひとかというところをみなさんにはゼヒトモわかって板抱きたい。そう、特にキミに。